第3章 【Dtm】小ネタ
A組での授業を終え、次の授業の準備をすべく職員室へ向かう。その途中、背後から女生徒の呼び止める声が聞こえた。
「相澤先生まって!」
既視感に眉をひそめ、振り返ると予想通り彼女の姿があった。
「どうした」
「あの。これ、良かったら!」
は小さな紙袋を差し出して微笑む。なんだこれは、と言うや否や次の言葉が紡がれた。
「チョコレートです」
「そうじゃない。どういうことだ」
「お礼です。はい!」
強引に押し付けられた紙袋を渋々受け止めるとは足元に視線を落とした。
「先生、私の知らないところでお医者さんに経過報告したり、お母さんに連絡したりしてるでしょう」
どこから漏れたのか。聞かれていたのだろうか。
俯くの姿にこの後来るであろう抗議の言葉を思い浮かべ、溜息を吐いた。
「悪かった」
「え?ふふっなんで謝るんですか。私のためですよね。ありがとうございます。相澤先生、いい先生だねって言われてますよ」
は顔を上げると朗らかに笑った。
監視されてると知ったら何かしら不満を持つものじゃないのか。年頃の女子なら尚のことだ。
呑気に笑うは責めるどころかお礼一つで話を済ませた。