第3章 【Dtm】小ネタ
.*・゚ 手のかかる子ほど .*・゚
「さんはどうだい」
「まぁ、なんとかやってるみたいです」
採点の終わった小テストの束を揃えると、背後からオールマイトに声をかけられる。話題は受け持ちの問題児の事だった。
緑谷といい爆豪といい…俺のクラスにはどうにも手のかかる生徒が目立つ。
の件は入試前から教師の間では周知の事実だったにも関わらず、筆記も実技も優秀で他の生徒を救わんとする姿勢が評価され合格となった。
事件の後トラウマを抱えて尚立ち直ったくらいだ。芯の強い奴だとは思う。が、俺が反対したのは言うまでもない。
「最近頑張ってるみたいだね。彼と」
「そうですね」
「聞いたよ。君が助言したんだって?相澤くんそういうの自力で乗り越えろってタイプかと思ってたよ」
「…煩かったんで」
目を輝かせて迫るの顔を思い出して眉間に皺を寄せる。本当のところ、敢えて男女を二人きりにするというのは教師として推奨すべきではないだろう。
しかし、今回のケースでは致し方なかった。
は心理療法を経て現在はカウンセリングを受けていると親御さんから聞いている。
幸い雄英に入学してから、当時よりも随分良くなっているとのことだ。
雄英での生活が、生徒達との関わりが、彼女の心に安らぎを与えているのは確かだった。
その上で、本人がより早く克服することを望んでいる。
記憶を辿り、過去を知ろうとしている。
それが正しいのかは俺にはわからない。
彼女自身が決めたのならやってみればいいと思った。何かあれば面倒だが俺が止める。
有事の際、直ぐに対処出来るよう空き教室には小型の監視ロボを配備している。演習場もまた然りだ。何かあれば通信が来るだろう。
また、担当の医師とリカバリーガールにも話を通しておいた。
「四月の初めに克服できなきゃ除籍だと言ったらしいじゃないか」
「…何なんですかさっきから」
「いやね、相澤くんてば素直じゃないなと思って」
オールマイトは朗らかに微笑んだ。
何を言ってるんだこの人は。俺は小さく溜息をついて軽くあしらった。
「さっさと仕事に戻って下さい」
この人は時間の使い方がなってない。
机の上を片付けながら言うとオールマイトはそうだった、と何か思い出したのか、慌てた様子で職員室を出て行った。