第3章 【Dtm】小ネタ
それからは「怖くてもじゃもじゃなのにね」と人をからかうような言葉を吐いて悪戯に口角を上げた。
そんな彼女の物言いは、同級生や他の教師と話す時よりもどこか幼く感じる。
俺に対して気を許してるという事か、はたまた舐められているのか。こいつの性分からして後者は無いだろうが。
「チョコ、甘くないやつだから先生も気にいると思います。非常食にもってこいな合理的なお菓子ですよ!」
「確かに、合理的だな」
得意気に話すはやはり普段よりも子供っぽく見える。ふ、と笑いを零すとはむくれて今度こそ抗議の声を上げた。
「なんで笑ったんですか」
「いや、何でもない。頂くよ。ありがとう」
不満をありありと表情に浮かべる。その頭をぽんと撫でる。目を細める彼女には最初の頃の男の手に怯える様子は見られない。
四月当初は俺の事さえも怖がっていたように思うが。
──それもそうか、除籍宣告したからな。
今は減らず口を叩くほどだ。言うほど怖がられてはいないのだろう。
「ではまた!」
「ああ。廊下は走るなよ」
「はーい!あっ、相澤先生。私、今まで出会った学校の先生の中で相澤先生が一番好きです!」
何を言うかと思えば。早足で去っていくの背中にまた溜息を零した。教師になって随分経つが、そんな事は初めて言われたな。
らしくもなく嬉しいと思ってしまった自分を嘲笑した。