第3章 【Dtm】小ネタ
感極まって私の手をぶんぶん振って何やら叫んでいる上鳴くん。手を掴まれてびっくりしたけど、特訓の成果か何ともなかった。私も私で嬉しくなって握った上鳴くんの手を振った。
「わっ……」
上鳴くんは声を上げたかと思えば、勢いよく手を離して赤い顔で口を開けたり閉じたりしている。
「やっべえ可愛いどうしよ!の手触っちまったよ!あれ!?てか触られても大丈夫なのか!?」
「おおおおい!耳郎っ!」
「あははっ」
響香ちゃんは上鳴くんに声を当てて可笑しそうに笑った。仲が良いなぁと思いながら戯れる二人を見守っていると、お茶子ちゃんがやってきて私の耳元で小さな声で話した。
「轟くんが廊下で待っとるよ」
「え!先に帰ってって伝えたんだけどな」
「ちゃんのことが心配なんだよ、きっと」
お茶子ちゃんは笑って言うと私の手を引いた。
「デクくん達もいたから途中まで一緒に帰ろ?」
「うん!」
机の横の鞄を手に持ち、みんなに帰るねと告げるとその流れで女子会はお開きになった。
廊下に出ると轟くんが本を片手に立っていて、そのすぐ近くで緑谷くんと飯田くんがお話ししていた。
「遅かったじゃないか。なんの話だったんだ?」
「乙女の話だよー」
「なんだそれは?」
お茶子ちゃんと飯田くんのやり取りに小さく笑うと轟くんは顔を上げて本をしまった。
「帰るぞ」
「やっぱり待っててくれたんだ」
「先に帰ろうと思ったが、お前危なっかしいから待つことにした」
「あ、ありがと。轟くんほんとに保護者みたいになってるね」
いつだかの爆豪くんの言葉を思い出す。
でもお父さんと娘的な関係では無いと思う。よく分からない関係だな、と心の中で呟いた。
「保護者つうか、飼い主みたいな……」
「えええ!?」
緑谷くんが会話の外から驚きの声を上げた。うん、私もびっくり。だって轟くんが飼い主なら私はペットになる。
轟くんそんなふうに思ってたのか……。