第3章 【Dtm】小ネタ
.*・゚ 羊とかっちゃん .*・゚
「爆豪くん、消しゴム落ちてたんだけど……違う?」
「……ん」
「はい、どうぞ」
休み時間。爆豪くんの席の下に落ちていた消しゴムを拾った。差し出された手にそれを乗せると爆豪くんは舌打ちで返事してそっぽを向いた。
「おい、爆豪。ちゃんとお礼しろよ」
「けっ。誰がするか」
切島くんがお母さんみたいに爆豪くんを咎めると、爆豪くんは口をへの字にして吐き捨てた。
「悪い、こいつ素直じゃなくてよ」
「いいよー爆豪くんシャイなんだよね。だんだんわかってきたよ」
「っるせぇ!テメェら調子のんなや」
「大丈夫、わかってる。すべては照れ隠しだよね」
「テメェはそんなに爆破されてぇのかクソ羊が!!」
「ひゃ!されたくないです」
爆豪くんは目を釣り上げて大きな声を上げた。それに驚いて慌てて首を横に振る。爆豪くんの釣り上がった目はだいぶ怖い……。
蛇に睨まれた蛙、ならぬ、狼に睨まれた羊だ。いや!私羊じゃないけど。
「その、私羊じゃなくてなんだよね。個性だって綿だし。まぁお父さん羊だから似たようなものかもだけど」
「しらん。テメェはクソ羊だ」
「だってー!」
「クソ羊」
「違うもん……余計なのついてるし。うう……」
一向に折れる気配のない爆豪くんに負けてしょげる。
ひどい人だ。緑谷くんこの人と幼馴染って大変だったろうな……。
落ち込んでいたら切島くんが負けるな元気出せ、と励ましてくれた。
「根気よく頑張る。いつか絶対爆豪くんに名前呼ばせてみせる」
「はっ勝手にしろ」
「あ、そうだ!私もあだ名で呼べばいいね。そうしたらおあいこだ」
何がいいかな?うーんと考えていると、ぼそっと「爆発さん太郎」って聞こえたけどそれは絶対怒られると思ったからスルーした。
んー……そうだ!
「かっちゃん」
うん、これが一番普通で呼びやすい。自信満々で胸を張ってもう一度呼んでみる。
爆豪くんはぽかんと開けた口を歪めた。その直後、額に鋭い痛みが走った。
「いっ!痛い……」
私のおでこに何が起きたの。
その疑問の答えはすぐに判明した。目の前にある爆豪くんの手が所謂デコピンの形になっていたのだ。