第3章 【Dtm】小ネタ
.*・゚ 真似っ子 .*・゚
今は昼休み。昼食を終え、教室で轟くんと常闇くんとお話ししている。二人は席が近いからかよく話しているところを見かける。
「常闇くんの黒影ちゃん可愛いよね」
「そうだろうか」
「可愛い、か?」
二人ともに疑問符を浮かべられる。
可愛いよ!影なのに喋るし!
息を巻いて力説するけどクールコンビは微妙な表情。私の綿も喋ったら可愛いのになぁ、なんて想像してみたらかなりファンシーな感じだった。マスコット的な存在になりそう。
「あっ!ねえねえ見て!」
いいことを思いついた。タイを外してシャツのボタンを第二まで開ける。二人が戸惑って目を逸らそうとするから、下に着てるよって苦笑した。
悪戯するみたいに笑って背中から綿を出した。首の後ろから上にもこもこと膨らむ綿。大きな手のようなものも生やしてみたら──
「常闇くんの真似!」
「これは、白影──ホワイトシャドウ──!」
「おお……すげぇな」
得意げに胸を張った。綿を膨らませたり揺らしたりすると本当に生きているみたいに見えてくる。私が動かしてるんだけどね。
ちょっと力んで手を象った綿を轟くんと常闇くんの手元に差し出して握手させてみた。二人は小さく感嘆の声を上げて綿の手を握り返す。
常闇くんの背後から黒影ちゃんが出てきて不思議そうに綿のモンスターもどき……白影の手を突っついた。
ゆらゆら動かしてみせると黒影ちゃんは『ナンダコイツ』と言いつつも一緒に踊るようにゆらゆら揺れていた。
うん、可愛いよやっぱり……私も体の中で飼いたい。
緩みまくる口元は全然抑えられない。
「やっぱ、器用だな」
「轟も氷で出来るのでは」
「俺はそんな繊細な造形に動きまでつけるのは無理だ」
「練習あるのみだよ!轟くんもできるようになったらいつか三人で共演しよう」
「氷影──アイスシャドウ──か…」
「いや、……頑張る」
両手を握って見つめたら、轟くんは何か言いかけてから頷いた。常闇くんが小さく"影の狂宴"と呟く。共演とかけてるのだろうか?常闇くんの辞書は難しい言葉が多くて新鮮だ。
黒影ちゃんはいつの間にか白影と手を繋いでいた。なんだか嬉しそうだ。また機会があったら出してあげよう。
くすっと微笑んで黒影ちゃんと繋いだ手を揺らした。
end.