第2章 【Dtm】Baby
「…………」
至極ゆっくりと顔をあげたは俺の顔を見るなり硬直した。身動きの取れない俺は至近距離にあるの呆然とした瞳を見つめ、この状況にどうしたものかと思案する。
「」
沈黙に耐えかねたのと、流石にTシャツ一枚の大きいをいつまでも膝に乗せておく訳にもいかなかったために先に口を開いた。は、我に返ったような表情を浮かべた後じわじわと顔を赤く染めていく。
「ひとまず、着替えを、頼む」
言葉を選びながら話はそれからだと伝えると、はこくこく頷き、タオルケットにくるまって自室へ駆けて行った。
「はぁ……」
姿が見えなくなって一気に気が抜けた。が戻った……安堵すると同時に脱力感が俺を襲う。にしても、あの密着した状況で暴走しなくて良かった。
の母に今戻りましたとメールを送って固まった体を解すべく立ち上がる。乾いた音を立てて膝が伸びた。
落ち着いたら途端に喉が渇いてテーブルの上のペットボトルを手に取って温くなったお茶を飲み干した。
「と……轟くん」
が今にも泣きそうな顔を下げて戻ってきた。
「ご、ご迷惑おかけしました……」
どうお詫びしたらいいか、なんて言いながら深々とこうべを垂れる。俺が気分は悪くないかと聞くとこくこくと頷いた。
「何があったのか、記憶はあるのか」
「うん。昔の出来事のように、ぼやっとしてるけど……う、うわあぁ……」
「大丈夫だから落ち着け」
「だって!恥ずかしいやら申し訳ないやらで。あれだ、酔っ払ってやらかした人の気持ち……」
「お前、未成年だろ」
「そうだけど、絶対そんな感じだよ」
顔を押さえてうわーだとかうえーだとか声を上げながら猛省している様子の。まあ、あの状況で元に戻ったら混乱もするだろう。俺がいくら気にしていないと言ったところでが謝罪を辞めることは無かった。
「勉強する予定だったのに、一日無駄にしちゃったね……ごめんね」
「また別の日にすればいい。小さいの面倒見るの楽しかったから、もう謝るな」
「た、楽しかったの!?本当に?」
目をまん丸にして驚かれる。俺が「楽しい」と言ったことが相当意外だったようだ。