第2章 【Dtm】Baby
引き摺られるままにやってきた部屋はらしい部屋だった。一際目を引くのがベッドに鎮座する大きな羊のぬいぐるみ。爆豪に「羊」と呼ばれるのは嫌がっているが、羊好きなのだろうか。訊ねるとの母が作ったのだと教えてくれた。
「ここにね、はいってるの。とって?」
小さいが指差したのは机の上の小箱。持ってみると軽い。それを渡すとは顔を輝かせて箱を開けた。
「みてーこれつけたいの」
中には飾りのついたゴムやヘアピンなどが入っていた。ああ、姉さんもよくこれで髪を纏めている。
お、そうだ。これで服の余ったところを纏めればいい。俺は適当なヘアゴムを二つ手に取り、一つは余った襟ぐりを纏めて後ろで結び、もう一つは引き摺った裾を手繰り寄せて背中の辺りで結って留めた。
「わあ!すごい!」
「きつくないか」
「うん!ありあとー!」
は満面の笑みを浮かべてその場でくるくる回ってみせた。かと思えば、何か思い出したようにぴょんぴょんと跳ねながら俺の手を振り回す。
小さいながらに凄い力だ。ちょっとした痛みを感じながらを制止しようとした。
「おい、」
「かみのけもやって!おーるまいとみたいにして!」
「、」
「だよ!」
「……」
「はやくはやくー」
翻弄されている。仕方なしに部屋の床に座り直すとはころころ笑って俺の胸に額を押しつけた。手に握らされた赤い毛玉のついたヘアゴムを片手に、細く柔らかい髪に手櫛を通して前髪を一房、ぎこちなく摘んで括る。
なんかオールマイトとは違う気がするがこれでいいのだろうか。
緩く結ばれた前髪を頭の上で揺らすは嬉しいのか小躍りしながら俺の周りを一周した、かと思えば背中にタックルを食らわせて悪戯に笑ってみせる。
「ねーねー」
「ん」
「とろろきくんすきー」
「ん……そうか」
かわいい。妹がいたらこんな感じか。いや、子供がいたらか?
普段の彼女からは考えられないほど、やたらめったら触ってくるのは幼児になったことでトラウマを忘れているからだろうか。
俺の名前を真っ先に呼んだこと、すぐに自室で服を着たことから記憶まで退化してる訳では無さそうだが。