第8章 本当のこと
彼の気配がまだ外にある事を
分かっていたが、
声を抑えきれず、私はボロボロに泣いていた。
「うっ………うっ……!…スケアさん……ひっく……スケアさん!!」
彼の気配から逃げるように、
急いで脱衣所に行き、
お気に入りの服を強引に脱ぎ捨て、浴室に飛び込んだ。
シャワーを勢いよく出して
冷たい水を頭から流して、馬鹿な火照りを冷ました。
クレンジングで肌をゴシゴシと擦り、お湯で洗い流した。
気合いの入った化粧が取れて流れていく。
少し頑張ってアップにした髪型も…全部消した。
シャワーを浴びて、
身体を拭いてパジャマに着替えている時、可笑しくて少し笑っていた。
何故、気がつかなかったんだろう。
ヒントはいつも散らばっていたはずなのに。
カカシがあんなに
変装が得意だとは知らなかった。誰にも気がつかれない。
さすが、はたけカカシ。
一流忍者は格別だ。
任務を華麗に遂行する。
まるでスパイ大作戦の主人公のようだ。
まんまと羽目た女は、泣きながら、主人公が去るのを見守るのだ。
脇役の私には
もってこいの演出だ。
スケアさんに恋が出来て良かった。後味は最悪だったけど、
私の想いに嘘はない。
カカシは演じてくれたのだから
感謝しなければならない。
感謝と謝罪を。
ただ、今はまだ出来ない。
わたしの心が落ち着くまで。