第12章 invasion
平子side
藍染が尸魂界に向かってからどれくらい経ったのだろうか
現世に残された俺らは穿界門を開く余力すら無く、ただただ待つことしか出来なかった
ふと、気配を感じた
「蝶…?」
蝶が穿界門を開いて戻ってきたらしい
おびただしい出血の跡…いや、今も尚傷は塞がっていない
ワンピースは赤く染まり、隊長羽織にも薄っすら血がついていた
「あいつ、何する気や…」
あんな状態で…
『癒して…大国主神』
はっきりした声が響く
「まさか…」
蝶の目の前に咲いた梨の花が1枚ずつ散っていく
その花弁は1枚俺にも引っ付いた
傷が消えていく
ギリギリ繋がったひよ里の体も、何名かが失った腕も…何もかもを癒していく
「あいつ、あんだけ怪我しといて…」
これ以上、力使ったら…
「平子さん」
「卯ノ花さんか?」
卯ノ花さんが俺にある薬を渡してきた
「どうか、蝶さんにこれを飲ませてください」
「効果は?」
「とても強力な睡眠剤です。
眠らせて、私が治療しなければ…」
「出血多量と…霊力の使いすぎで死んでまうか…」
「はい。ですから…お願いします」
「…わかった」
俺は気付かれないように蝶に近づく
『っ…はっ…』
冷や汗が蝶の頬を伝う
無茶し過ぎや…
『大丈夫…あと少し…』
恐らく斬魄刀と話しているのだろう
何が大丈夫やねん
もう限界やろうが
「もう…休めや」
そう言って俺は蝶に抱きついた
『真…子?』
「お前もボロボロやないか…」
『大丈夫…これくらい…』
「俺らの傷治す前に…自分の傷治さんかい…」
『…かすり傷よ』
「かすり傷はこんなに出血せんわ」
しゃーないか…
『はは……っむ…ん』
「アホ、無茶すんな言うとんねん」
俺は口に含んだ薬を蝶に飲ませる
これが薬だということに気付いたらしい
『だめ…今は…』
「おやすみ、蝶」
俺がそう言うと蝶はすぐに眠った
「ほんま…無茶しすぎや…」
「蝶…姉さん…?」
ひよ里が目を覚ましたらしい
「大丈夫か」
「…蝶姉さんは…?」
「蝶は今、卯ノ花さんが治療しとる」