第10章 preparedness
「"王鍵"」
元柳斎の言葉に驚く
『いや…何て事をしようとしてるのよ…』
「…王鍵…って何ですか?」
「"王家の鍵"よ。文字通りね。尸魂界にも王家ってのがいるのよ。実際、あたしも隊長も直接見たことは一度もないんだけどね」
乱菊が織姫に説明していた
「然様。王は名を"霊王"と言い、尸魂界にあって象徴的でありながら絶対的な存在。その王宮は尸魂界の中の更に別の空間に存在し、王属特務が守護しておる。"王鍵"とはその王宮へと続く空間を開く鍵じゃ」
「それじゃあ…藍染…さんはその王様を…」
「殺す。それが奴の目的じゃろう。…じゃが問題は其処では無い。」
『…藍染が見てたのは王鍵の在り処を記した本…ではないわね。そんなもの、存在しないし。』
「…如何にも。王鍵の所在は代々十三隊総隊長にのみ口伝で伝えられる。故にその所在を記した本なぞ存在せん。
奴が知ったのは"王鍵の創生法"じゃ」
王鍵を作るってこと…?
「つまり…その創生法に問題があるということですか?」
乱菊がそう聞いた
「否、問題なのはその材料じゃ。王鍵の創生に必要なのは十万の魂魄と半径一霊里に及ぶ重霊地。
その場所は時代と共に移り変わり、その時毎に現世で最も霊なるものが集まり易く、霊的に異質な土地をそう呼称する。」
『…藍染の狙う重霊地は…空座町って訳ね。』
「そうじゃ。藍染がもし、文献通りのやり方で"王鍵"を完成させた場合、空座町とそれに接する大地と人が全て世界から削り奪られて消え失せる。」
「…そ……そんな……止める…それを止める手だては……あるんですか…?」
織姫が震えながらそう聞いた
「無くとも止める。その為の、護廷十三隊じゃ」
織姫は安心したような表情をしていた
それを見た乱菊が微笑む
「…僅かじゃが時間は在る。涅からの報告によれば魄内封印から解かれた崩玉は強い睡眠状態にあり、如何なる手段を用いようと完全覚醒まで四月はかかるということじゃ。」
『要するに…決戦は冬ってこと?』
「そうじゃ。それまでに力を磨き、各々戦の支度を整えよ!」
「「はい!」」
冬獅郎と乱菊が返事をしていた
「そして、井上織姫」
元柳斎が織姫に話し始める