第10章 オマケのオハナシ
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「なんだよ?
どした?」
珍しく朝から、保健室に飛び込んで来たカズは
ムスッと不貞腐れた様子で、雑誌を差し出してきた
「ん?
……え、これ!?」
思わず、持ってたカップを落としてしまいそうになる
「お前…、だよな?
いつの間に?」
「俺のが聞きたいっつーの!」
逆向きに椅子に座って、
ぷうっと頬、膨らませてさ…?
「センセも笑ってんでしょ。
あんなとこ晒されて、みっともないなって」
「笑ってねぇよ」
「じゃ、センセも怒ってよね!?綾子さんのこと」
俺の持ってたカップを取り上げ、
飲みかけのコーヒーを口に含む
「わかったよ」
カズは、モデル代貰わなきゃ、なんて意気込んでたけど
今回の件に関しては
綾子を怒る気にはなれなかった
そりゃ、俺のカズが
注目を浴びるのは、内心穏やかじゃないけど
開かれた雑誌を持ち上げ、
目の前の恋人と見比べる
背伸びしたジャケット姿が、七五三みたいで
ただでさえ、
可愛いくてたまんないのに
初々しくセットした髪
ピンと背筋を伸ばし、
両手をしっかり膝に置いてさ
緊張した表情で、何かを気にする様は
写真に添えられた言葉に、
ピッタリだった
"大切な瞬間を、
とっておきのコーディネートで"
"今から僕、
大好きなアナタに告白します"
そんな瞬間が、
永遠に残るなんてまずない
本来なら、見れなかったカズの表情
こうして、見ることが出来るなんて思ってもなかった
"俺、潤くんと一緒じゃなきゃ、
……やだよ"
胸に刻んだ台詞と
カズの表情を想い描いて、
また、胸が震えた
俺もだよ
カズが一緒じゃなきゃ、
やだよ
「センセ、じゃぁ
綾子さんに連絡しといてね」
立ち上がったカズが、
そう言って、背中を向けたから
白衣に包んで抱きしめた
「ちょっ…、見られ」
「大丈夫。ちゃんと隠れてるから」
「……はいはい。
俺はちっちゃいからね」
憎まれ口さえ愛しいだなんて、
ホント、手放そうだなんて
バカだったよ
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