第10章 オマケのオハナシ
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俺は知っている
センセが、俺に内緒にしていること
怒ってるわけじゃない
嫌なわけじゃない
嬉しいのも半分
だけど…弱味を握られたような複雑な心情を
センセはきっと、わかりはしない
センセから見たら、俺はいつだってガキだから
出会った頃から今まで、その立ち位置は変わらないから
大したことじゃないだろうけどね?
俺は、やっぱり複雑だった
センセが財布にしまってる、
綾子さんから手に入れただろう"例の写真"
あんな、恥ずかしい場面撮られてさ?
モデル代貰わなきゃ、だなんて、はしゃいでみたけど
そうでも言わなきゃ、
どうしていいかわかんなくて……
ゲームに夢中な、
なーんも気にしてないガキのフリでもしなきゃさ
大人なセンセとの距離感が、あまりにも鮮明で
モヤモヤしてる、なんて
やっぱりガキじゃん、って、センセが知ったら思うよね
セーブしたゲームの電源を落とし
ひとりになったリビングで、身体を伸ばす
うーん、って、
視界に入った、自分の掌
開いて…、ぎゅっと握ってみて……
「……ちっちぇ~…」
クラスの男子と比べても、俺の手は小さいと思う
野球してんのに、焼けても赤くなって終わりだし
白い肌にチビで、
手までちっさくてさ…?
生意気な事でも口にしなきゃやってらんない
買い物だって、
男同士っての抜きにしても、センセと俺は、兄弟にしか見えねーし
並んで歩いてるとさ
ショーウィンドに写る度、
思い知らされる
今さら、だけどね
それに、ひとつだけ
買い物に一緒に行かない理由は……
"ピンポーン"
鍵持ってんのに、インターホンを押したがるセンセ
センセは、
"おかえり"って、
迎えて貰うの好きだから
「おかえり」
「ただいま」
俺も好きだよ
センセの顔が緩むから
それに、
玄関の段差18センチ
センセに見下ろされない目線に
密かに喜んでるなんて
絶対、秘密
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