第1章 相変わらずな俺ら
微睡んだ瞳が、徐々に重くなり、
シャワーも浴びず、小さく寝息を立て始める
「こらっ、カズ
汗かいたまんま寝ちゃダメだって」
華奢な肩を揺さぶり、バスルームに促す
「やー、もうデキナイって…
センセってば、やらしぃ…」
んふふと、目を閉じたまま、からかうように笑う
「もうしねぇよ」
「せんせぇがぁ~あっためてくれたらいーじゃん」
「いや、全身ベタベタじゃん、明らか汗だけじゃねーし」
「センセのせいじゃん。腰痛いもん。立てないっ」
コレだよ
ヤッた後の、別人かってくらいの、
小悪魔甘えモード
どっちが、やらしぃんだよ
それにさ、どうしようもなく、いたたまれなくなんのは
いつまで立っても変わらない、コイツの"センセ"呼び
最初は逆に
萌えてたりもしたけどな
付き合って1年だぜ?
俺だって、プライベートじゃ、カズって呼んでるし?
だからって、そんなの気にする大人もどうかと思う
「ほらっ、カズ」
抱き抱えるように、身体を持ち上げると
"やだぁ…センセぇ"って、
ジタバタ身体を捻らすし(コレは絶対わざとだ)
「あのなぁ~
センセセンセって、
いい加減、背徳心ハンパねーんだけど?」
「仕方ないじゃん?
イケナイコトしてんだもーん♡センセーはぁ」
「イケナイコトって」
そんなこと言われたら、
身も蓋もないっつーか……
確かにな…
生徒に手を出してる俺は、最低…だけどさ
黙り込んだ俺に
暴れてた身体は、抵抗を止めて
甘えるように、抱きついてきた
「……?」
俺を見上げ、
不自然な間が数秒
微かに開いた唇が
初めての言葉を象る
「潤くん」
コレでイイデショって、得意気な笑顔に
反応の仕方がわからない
「くんって、お前」
「いいじゃん潤くんで。潤くんなんだから」
くふふと笑って、
バカにしてんのか何なのか…
「もういいよ。なんでも」
そう言った口調とは裏腹に、俺はたぶん
にやけてた
素直に嬉しかったんだよ
こんなときくらい、
センセなんて呼ぶなよ
ふたりでいる時は、恋人なんだから