第8章 愛のことば
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そりゃ、あたりまえだ
見合いなんて、
それ目的の話なんだから
落ち着かなきゃ、って
自分に言い聞かせながら、
名前もわからない、
材料が何かさえわからない塊を口に運ぶ
センセの優しい声や笑い声が聞こえる度に、
自分で驚くくらい、動揺していて、味なんか全然わかんない
だけど……、
すべてが聞こえたわけじゃないけど、
次第に雲行きが怪しくなって、
明らかに様子が変わった
センセのお母さんの怒鳴り声と
ハッキリと通るセンセの声
"結婚は、しません。
きっと"
……センセ?
"したくても、
出来る相手じゃないので"
……ねぇ、なに言ってんのさ?
それって、どういう意味……?
さっきとはまるで違う緊張感に襲われて、
ナイフとフォークを持つ手が、カタカタ震えてる
すると、
こちら側に向けられたとしか思えない声が響いて
驚いた俺は思わず固まる
「カズ!
いつぶち壊してくれんだよ!?」
手にしたカトラリーが、
大きな音を立て床に落ちた
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