第7章 単純で曖昧で
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「じゃあね♪
そういうことだから」
上機嫌に弾んだ声が、背中に降ってくる
返事もせず、車を降りようとしてる俺に、
念押しみたいに、放たれた
「……ありがとうございました」
とりあえず、送って貰ったお礼を言って
"そのこと"には触れなかった
映画やドラマじゃないんだから
ましてや、男同士だぜ?
お見合いぶっ壊すなんて、有り得ねえ
すべてを正常に戻そうとしてるセンセに
俺が……、何を言えるってんだよ
"もしアナタが来なくても、私がちゃーんとぶち壊してあげるから、安心して"
安心も何も、
はなっから、そんな心配してない
気にもしてない
車が走り去ったのを確認し、後ろに振り返る
冷たい空気に首を竦め、
あまりの殺伐とした雰囲気に、やたら切なくなった
季節はもう、すっかり冬で……
少し前まで、
センセに送って貰った後に眺めてた景色が
こんなにも変わっていたことに、今さら気付いた
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