第7章 単純で曖昧で
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まるであたりまえみたいに待ち構える赤いボディ
高級外車に乗ってる事さえ、至極自然だ
開けたウィンドウから、笑顔で左手を振ってる
「何しに来たの?」
いくら部活終わりで薄暗いとはいえ、
校門で待ち伏せだなんて、目立って仕方ないわ
「つれないわねぇ。
今日は相手してくれないの?」
「ヤダよ。
そこ、狭いもん」
「あら、それなら家来てもイイのよ?(笑)」
俺らを遠回しに眺めながら、何やら話してるギャラリーの気配に
面倒くさくて、ため息をついた
返事もせず、助手席のドアを開ける
何にも言わない俺に、
ふふっと笑いながら、
一瞬だけ、俺に目線を向け、アクセルを踏み込んだ
「疲れてっから、送って貰おうと思っただけだよ」
「寄り道してから?」
「…どっちでも」
「ふふ、…ねぇ、そういえば。
潤、お見合いするそうよ?」
「知ってる。
でももう関係ないし」
意外だと思ったのか、数秒の沈黙
「ツマンナイのよね~
そう簡単だと」
「は?」
通学路を抜けた車は、大通りを突き進み、
帰り道とは反対方向を走っていた
「何がだよ」
「アナタは簡単にセックスしちゃうし、潤はお見合い。
相手の女は期待出来そうにないし」
「意味わかんね」
「張り合いないのよ。
もうちょっと揉めてくれたらいいのに」
呆れて言い返す気にもならない
何だって俺らが、コノヒトの暇潰しに付き合わなきゃなんないの
「なにカッコつけてんのよ。ガキのクセに」
「ちゃんと前見て運転して下さい」
「んもぅ。
バレバレなのよ。無理してんのが!
許せないのよ。
ヤった男がダサイのなんて」
「わわっ、ちょっ…」
雑なハンドル捌きに、体が左右に揺れる
勘弁してくれマジで!
そう叫びそうになった瞬間、車は道路脇に急停車した
「わっ、おぁっ…?」
「決めた」
「は?」
苛立ちながら、覗いた運転席
嫌な予感を醸し出す彼女に、悪寒が走る
「ブチ壊せばいいのよ!お見合いなんて」
「ちょ…!ワケわかんないのアナタでしょ」
知らない街の
すっかり暗くなった夜空の下
コドモ染みたオトナの計画に、巻き込まれようとしてた
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