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【M×N】インターホンはお静かに

第6章 サヨナラのあとで


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気怠い身体をソファーに沈ませ、
ネクタイを緩めると、シャツから抜き取った


横になり、天井を仰ぐ




休日まで忙しく研修入れたり、

急ぎでもない仕事を前倒しでこなしてみたり、

夜はそのまま、飲みの席に合流する





その時は、それなりに楽しい時間を過ごしても


こうして部屋に戻り、ひとりになると、

途端に虚しさばかりが押し寄せた




そして、余計な記憶ばかりが頭に過る




……自分から手放したのにな




自覚していたよりもずっと、
アイツは俺の中を占めていたんだと思い知らされる


あんなに想っていた櫻井先生を
今じゃ穏やかに、同僚として見ていられるし



元々、代わりだけの存在だったのにな



だから余計に、こんなにハマってしまうとは思ってなくて







考える事からも逃げたくて、目蓋を閉じた





しばらくすると、
 
静寂を打ち破る機械音が、部屋に響く





無視しても、

一向に鳴り止む気配はなくて、電話の相手に見当がついた





出ないなら出ないで、

明日にでもいきなり押し掛けてくるだろうと、

仕方なく、のろのろと身体を起こす






「……もしもし」

『ちょっと!留守だと思ったわよ!?』





酒の入った頭に響く高音


無駄な抵抗と思いつつ、受話器を軽く耳から離す







「悪かったよ。仕事から帰ったとこだったんだ」

『こんな遅くまで…?

アナタ、そんなんじゃやっぱり…、』




次に言うセリフなんか丸わかりで


だけど、何処かで


それもアリなんじゃないかって、思う自分も存在していて






「するよ」

『え?』

「したらいいんだろ。見合い」





母親の声色が、急に変わる


内容もほとんど入ってきはしないのに、相槌だけを繰り返して…






こうして、アクション起こして


故意にアイツを引き離せば


元に戻ることもきっと不可能になるんじゃないか




そんな風に、考えた








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