第6章 サヨナラのあとで
.
普通にしようと思えば思うほど、
違和感を感じてしまうのは自分だけなのか
それとも、
何も言わないだけで、周りもそれに気付いているのか
どちらにしても、そこを追究しないのは、
誰も、そこまで俺に関心がないからだ
ただ過ぎ行く毎日
"普通"のありきたりな時間
部活に行こうと、
カバンに荷物を突っ込んでると
噂好きの女子が、内緒だよと数人で盛り上がってるのが、
丸聞こえだった
「松本先生!
お見合いするんだって!」
一瞬、動きが止まる
ただの噂かも知れない
だけど……その話が出ていたのは事実だから
もしかして、と思う
センセが承諾した、ってこと?
そうだとしたら、
センセは、もう
俺の事なんか過去にして
歩き始めたって事なんだよね
ふぅ、と小さく息を吐いて席を立った
カバンを肩から提げ、教室を出る
寒々しい廊下を進みながら、保健室が近付くにつれ
心臓はバクバクいってて、
変な緊張を誤魔化そうと、背筋を伸ばし、早歩きする
通り過ぎるその瞬間まで高まった鼓動は、
保健室から離れるにつれ、静かにおさまってゆく
肩に掛けたカバンのベルトをぎゅっと掴んで
進む廊下は、いつもより長くて
自分の身体なのに重くて、思うように動かなくて
なのに、裏腹な思いまで過ぎって…
"もし、ドアが開いたらどうしよう"
……だなんて、淡い期待を抱いていたなんて
もう、虚しさでしかないのに
.