第4章 冷たい頬
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押さえ付けた腕に力を込め
薄茶色の瞳を覗き込む
お前は今、
何を考えてる?
いつかと重なるシチュエーション
お前はあの時も
煽るように言葉を重ねた
自分を安売りするように、身体を差し出して
そんな気、ホントはないくせに
どうして、そんな悲しい事すんだよ
わかるから
お前は、回りくどいだけで、わかりやすいんだから
「お前が、
ホントにそうしたいなら」
それを許してくれるなら
そうなってもいいかと思う時がある
だけど……、それは
たくさんの犠牲の上で成り立つものだから
お前だってわかってるから、
未来の見えない不安定な今だから
試すような事するんだろ
「…………」
唇を噛んで、俺を見つめて
揺れる瞳が、すべての答えだ
軽はずみに決めちゃ駄目なんだ
お互いに大切だから、……悩むし、迷うし、傷付く
「…………わかってんだろ?」
潤んだ瞳
震える身体
でも、結局
ここまで追い詰めたのは
俺、……なんだよな
力を緩め、
ゆっくりと手を離し、解放する
頭を撫で、どうにか笑顔を作った
「……お見合い、しようかと思ってる。
散々、好き勝手してきたしな」
残酷な嘘が、
いつか、お前の幸せに繋がるって信じてる
それまでずっと
憎んでくれたらいいから
「元に戻ろう。
ただの、……センセと生徒だった頃に」
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