第4章 冷たい頬
.
「あっつぅ…」
割れた破片と、溢れたコーヒー
制服に派手に飛び散った
「おい、大丈夫か」
センセが距離を詰め
避けた腕を無理矢理引き寄せる
「大丈夫だよ!離せよ!
自分だって、溢れ……」
「俺はいい。それより、火傷してないか!?」
赤くなった手を掴んだまま、慌てた顔してさ
「とりあえず脱げっ」
嘘なんてない
俺を、心から心配してる
自分の起こした浅はかな行動と両極端で
自虐的な思いさえ芽生える
センセはどれだけ、
俺に本気を見せれんの?
どんな俺だって、好きだって言える?
……こんな、俺でも?
「離してよ。
……脱げないじゃん。
あ~…シミになっちゃうかな」
センセに見せつけるみたいに、ブレザーに手を掛ける
「汚れただけか?痛みは……」
第2ボタンまで外してるシャツ
だらしないままのネクタイ
「ちょうどいいし、
今さら部活行くのもナンだしさ。
久しぶりに、ココでヤる?」
ネクタイを緩め、
首に垂らしたまま
センセを上目遣いで見つめる
怒るだろ?普通
なんだよ、その目
なんで……?
「……いいのか?」
「え?」
何かを発する処か、
考える間もなく
いきなり乱暴に
側のデスクに押し倒された
掴まれた両腕に力が籠る
コーヒーと薬品の香る中
センセのニオイがした
微かな煙草と、白衣の柔軟剤
ドクドクと煩い心臓
センセの、哀しい目が
俺を追い詰めて、
俺の、すべてが
センセを追い詰める
.