第4章 冷たい頬
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「……お前暇なの?」
開口一番に冷たく言い放って
デスクに肘をついたまま、ケータイ片手にファイルを開く
「切るぞ。仕事中なのわかってんだろ」
コイツのこういうとこ、
オフクロとそっくりで、必要以上の、苛つきが芽生える
何か言いかけたのにも構わず、電話を切って
白衣のポケットに突っ込んだ
保健のセンセだってね
それなりに忙しんだよ
余計な事ばかりに構ってられない
なのに、今朝のアイツの顔が、脳裏に焼き付いて
何をしてても、集中出来ない
ただ……
会いたい
声が聞きたい
抱き締めたい
避けられるんならさ
もう、職権乱用だって、
憎まれ口叩かれたって構わない
そうでもしなきゃ、
アイツは俺の事、避け続けるだろうから
デスクの隅に置いた、
型の古いプッシュホン
受話器を取り、回線を繋ぐ
「もしもし。
呼び出しお願いしていいですか……」
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