第3章 秘密
冷えた空気に身震いして……
目覚めたのは、たぶん早朝
明るんだ空が、ガラス越しに視界に映る
リビングのフローリングで
大の字で転がる自分自身
見慣れた天井を睨みながら、瞬きを繰り返す
「……ってぇ……」
飲み過ぎた酒のせいで、頭は痛いし、
胸がムカツク
水を飲もうと、どうにか立ち上がり
ゆっくりとキッチンへ向かうと
イヤでも目のいったテーブルの端
急な電話が良かった試しなんてほとんどない
出た事を後悔するような下らない内容か、酷い話だ
"お見合いの日取り決まったの"
"キャンセルなんてしたら、絶対許さないわよ"
"部屋まで押し掛けるから"
悪魔のような言葉を並べ、
息子を溺愛する母親は、
余計なことばかりを思い付く
だけど……
強引に断れないのは、少しばかりの罪悪感
"好きな人でもいるの?"
"そりゃ、俺もイイ歳なんだし"
"それなら、家に連れてらっしゃい"
"……それは……"
"親に紹介も出来ないような相手でしょ?そろそろ……"
"……遊びのお付き合いは止めなさい"
遊びなんかじゃない
そんな軽い気持ちで、
付き合ってるわけじゃない
それでも、
俺らの"今"の延長線上には何があるかなんて、
正直、わからない
テーブルに置いた携帯
期待を込めて覗いた画面には、
何の跡形も残されてなかった
こんなに会いたいのに、
家に行くことも、
待ち伏せすることも出来ないなんて
こんな機械に頼らないと、
会える方法なんて、ほんと僅かで……
カズ?
なぁ、お前は今、
なにしてる……?