第3章 秘密
「ごちそうさま…、でした」
「こちらこそありがとう。付き合ってくれて」
彼女オススメのフレンチは、確かに美味くて
食の細い俺でも、残さず食べれた
「ワインを飲めなかったのが残念だったけど」
「……すみません」
「やだ。どうして謝るの」
ふふっ、と笑って、
車にエンジンをかける
端から見たらきっと、俺らは姉弟に見えてんのかな
恋人、には無理あるだろ
別に、それはどうだっていいんだけどさ
センセと自分って置き換えるとね
まぁ、それ以前にオトコ同士だけど
会話もないまま、夜の街を走る
センセは、彼女のどういうとこに惹かれたんだろう
気付かれないよう、目線だけで、横顔を盗み見る
「なに?」
前を向いたまま、
俺の視線に気付いて聞き返して……
「……いや、別に」
窓の外に目を逸らしたけど、
流れてた街並みが徐々に停止画になった
「え…?」
ゆっくりと停車した車
彼女が、俺に身体を向ける
「潤と私の事、
気になってるんでしょう?」
「別に、」
「嘘。気になってしょうがないって顔、ずっとしてるわよ?」
「……なんで、俺が……」
センセと付き合ってる事を認めたわけじゃないし
センセが話してるとも思わない
シラを切ればいいだけ
「センセとなんかあるわけないじゃん」
「……センセだし?
オトコ、だから?」
「そうだよ」
澄ました顔で、
当たり前じゃんって、口元で笑う
「そうよね?
やっぱり、オンナのがイイわよね?」
髪を耳に掛け、
ふわりと香る甘い匂い
唇に伝わる柔らかさと温度
それと同時に、頬に添えられた指には、
やっぱりシルバーが収まってる
「なに…す…」
俺のシャツを指先が辿り、
赤い唇が、怪しげな笑みを含む
「ほら?
服をプレゼントするのは、
脱がせたいからって言うじゃない?」
「しんねーし」
「ふふ、わかる気がするなぁ」
首筋からシャツに這う掌が、
センセと同じで冷たくて
思わず、
ゾクリとした