第2章 夜の影
「悪かったな」
開いたドアと同時に、降ってきた言葉
"なにが?"って、
気にしてない素振りで、センセに目線を合わせる
ベッドから身体を起こして、
近寄るセンセを避けるように立ち上がった
「そろそろ帰ろっかな」
「メシ食ってけよ」
「腹減ってない」
素っ気ない返事に、
少し困ったセンセの顔
我が儘な安堵感が芽生えて、
やっぱりガキだなって、自覚する
センセを困らせたって意味なんかないのに、
そうしないと不安を拭いきれない
……矛盾だらけだ
「……怒ってんのか」
「は?なんで?」
「なんでって…」
次第に薄暗くなる外の景色を、
ガラス越しに、ただずっと眺めてた
センセ達の話し声が、遠くに聞こえて
想いと裏腹に、頑なになる気持ち
どうしようもない疎外感で、暗くなる空が切なくて
この前ベランダにいた時よりも、また苦しくなった
センセに、俺の気持ちがわかるわけない
「カズ…あのさ。
さっきの事は謝る。嫌な思いもさせたしさ」
「だからぁ、気にしてないって。
一緒に飲みに行ったら良かったじゃん。
あ~なんなら、今から行く?」
「……」
一方的に捲し立てた俺に、
センセは怒るわけでもなく、小さくため息をついた
どうせ、メンドクサイ生意気なガキだって、呆れてんだろ……
「カズ、お前はさ?
本気でそう思ってんの?」
胸が、ズキンと痛む
ごくんと息を飲んで、伝える言葉を探してる
俺は……
俺は…さ…
「俺は、アイツらよりお前といたいって思ったから、断ったんだ。
カズは違うのか…?」
ギュッと握った掌は汗をかいて
カラカラに渇いた喉からは、上手く声が出ない
「俺は……」
センセの視線が痛くて、
苦しくて
"ピンポーン"
"ピンポーン"
カタチにしかけた想いは、
固く結んだ唇に閉じ籠って……
代わりに裏腹な行動になった
「誰か来たよ。
センセ忙しいみたいだし、俺、帰るわ」
ジーンズのポケットに、
財布とケータイを突っ込んで
口元だけで笑うと、背中を向けた