第2章 夜の影
シンと静まり返った部屋は、
いつもより広く感じる
勝手に脱衣場から拝借したタオルで、
濡れた頭を拭きながらリビングに足を踏み入れた
キチンと整理された部屋は、相変わらずだなって
こういう時ばかりは、コノヒトのこーゆう所が、ヤケに疎ましく感じる
別に……
帰りを待ってんじゃない
気になったんだ
センセが大事に育ててんの知ってるから
リビングと寝室まで繋がる広めのベランダ
洒落たテーブルとイスを置いて
傍らには小さなプランターがいくつか置いてある
"案外簡単なんだよ"って、得意気に育ててんのは、
プチトマトにバジル、ルッコラ、ミント
料理や付け合わせに実際使ってるし
マメっつーか、好きなもんには、ホントこだわるからね
あれ…大雨だったらヤバイでしょ。ちゃんと避難させなきゃさ
リビングの端に、ゴミ袋敷いて、プランターを全て並べた
「うーわ、ビショビショだわ」
透けたシャツを摘まんで、
雫の滴る髪の毛を、掻き上げる
横殴りの雨をガラス越しに眺めながら
来た時よりも強まる雨に、センセの言葉を思い出した
"今日中には帰ってくるから"
……無理だろ、いくらなんでも
そう思いながら、
センセのシャツを借りて、ソファーに踞る
"今日は泊まってくるかも知れない"
母さんに残した曖昧なセリフは、確実になりそうだ
帰って来るとか関係なく、この雨じゃ、外に出るのも危ないしね
テレビの電源を入れると、大雨警報が出ていて
自然とため息が漏れた
わかりきったことなのに、
何処かで期待してしまうなんて……
センセ?
ホント厄介だね、この感情は