第13章 鉄の処女
「フォウ様っ!!」
古の盾を失いフォウはその場に崩れ落ちると、近侍の一期一振が彼女に駆け寄った。
フォウは顔を俯かせ、涙していた。
「ゼロっ!一体彼女に何を……?」
歌仙達はゼロの横に立つと、目の前で泣き崩れるフォウの姿に困惑する。
「古の盾は審神者の集中力によって護りを固くする。平静を保てないと上手く扱えないんだ。ま、ようするに心理戦だな。私に勝てるものは、いない」
一期一振と斬り合っていた二振りは、ゼロがフォウに何を言っていたのか、聞こえていない。
だが、ゼロのことだ。
きっとエグいことを言って追い詰めたに違いない。
「ゼロ……きみって人は本当に」
「なんだ?戦場で平静を保てないやつは、大抵負ける。それだけだ」
ゼロは愉快そうに笑う。
これで、フォウを倒すことができる。
ゼロはフォウに一歩づつ近づいていった。
「お待たせフォウ、そろそろ殺すけど、心の準備は出来てるか?」
「あ……あぁ……」
迫るゼロに恐怖して足がすくみ逃げることが出来ない。
ゼロは刀を正眼に構えた。
斬られる。
そう思ったが、ゼロに斬られる寸前、彼女の近侍がその刃を己の太刀で受けとめた。
「く……っ!」
だが、一期一振の太刀ですらゼロの太刀筋は重く、疲弊していた彼は堪えることが出来なかった。
重みに耐えきれずに、彼の太刀はその手からこぼれ落ちる。
「フォウ様は、この私が守って……」
ゼロとフォウとの間で両手を広げるや、一期一振はフォウを庇いながら後ろに下がる。
ゼロは彼らの様子を黙って見ていた。