第13章 鉄の処女
「うぅ……っ!?」
途端、ゼロは苦悶の表情を浮かべ、両の手で頭を抱えた。
がしゃんと音を立てて、彼女の愛刀が地に落ちる。
「やめっ……やめろっ……ここで、殺さなきゃ……」
頭を抱えながら、ゼロは何かに抗うように体をよじらせた。
「くっ、こんな時に……出てくルなっ……」
痛みに耐えるように歯を食いしばるゼロに、フォウと一期一振はその様子を見ていることしか出来なかった。
「うぅ……うっ」
ゼロは苦しそうな声をあげ、俯くと、頭を抱えていた手は、だらんと力無く下に垂れる。
そして、次にゼロが顔を上げた時、空気が変わった。
「……こ、ここは?」
フォウはゼロの様子に目を見張った。
先ほどの表情は違い、この状況を戸惑っているような、怯えているようなゼロ。
その様子は、可憐な少女のよう。
普段のゼロとはあまりにかけ離れた彼女の様子に、山姥切達は一体何が起きているのかわからなかった。
「ゼロ姉……様?」
「フォウ?なんで……私は、一体?ここ……はどこなの?」
優しい声音、けれど意志の強い瞳を持ち、凛としたたたずまい。
フォウがずっと憧れてやまなかった姉、ゼロだ。
フォウは嬉しくなって感嘆の声を漏らした。
「ああ、ゼロ姉様!」
ゼロの様子に、たまらずフォウは彼女に駆け寄る。
「フォウ様っ!」
一期一振は駆け寄るフォウを引き留めようと手を伸ばしたが、その手は届かなかった。