第13章 鉄の処女
フォウが恐怖に立ちすくんでいると、視界の端に山姥切や歌仙の姿が映る。
ゼロは妹のファイブを殺した後、彼女の近侍を奪ったと報告があった。
きっと、彼女は近侍が欲しいのだ。
もし、フォウの近侍も同じく奪おうというのが目的なら。
そうだとしたら。
「わ、私が死んだら、私の近侍はきっと後を追います。審神者と刀剣男士はそれくらいの強い絆で結ばれているのよ?」
フォウの近侍、一期一振は絶対フォウと共に死を選ぶ。
「違うよ、体だけの関係だ。君たちにはソレがないって聞いたけど」
「やめて!口を慎んで、ゼロ姉様!」
「君が死んでも、君の近侍は死なない。なぜなら……」
ゼロは振り上げた刀を、勢いよく振り下ろす。
「私が君の近侍とヤリまくってやるからなぁぁっ!!」
「やめてぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
フォウの悲鳴に似た叫びが辺りに響く。
その声に、歌仙達と戦っていた一期一振がハッとして振り向いた。
「……っ!?」
その目に飛び込んできたのは耳を塞いでうずくまるフォウの姿。
古の盾が破られた時、彼女を守れない。
フォウを護っていた翠の光は今にも消えかけており、恐れていたことが現実になろうとしていた。
「フォウ様っ!!」
刀を構えながら、一期一振はフォウを渾身の力を込めて呼ぶ。
「……っ!」
その声はフォウに届き、フォウはハッとした表情を浮かべた。
そう、私は負けるわけにはいかない。冷静でいなくてはならない。