第13章 鉄の処女
古の盾はあるが、近侍と離されてしまったことでフォウは不安に駆られる。
すると、ゼロはゆっくりとフォウに向かって歩み寄った。
「どうしてゼロ姉様は私を憎むの?」
「憎んでないよ、殺したいだけだ」
「わからない、わからないわっ!」
強い眼差しの美しい姉、ゼロ。
昔は、昔の彼女は……。
「ゼロ姉様、目を覚まして!昔の優しいゼロ姉様は、どこに?」
「さあな!私は私だ、昔から」
飄々とした様子に、フォウの顔に焦りが浮かんだ。
「ゼロ姉様、覚えてる?幼い私がいじめられて泣いていたら、私が泣き止むまでそばにいてくれたよね?」
「人まちがいじゃないのか?」
「いいえ!それがゼロ姉様の真の姿よ。忘れないでっ!!」
ゼロは愛刀を抜くと、刀を握りしめたまま右手を掲げる。
切っ先を空に向け、祝詞を唱え始めた。
「第五の力、古の威光。現世に顕現せし力、今この手に。神罰が彩る断罪の槍、その眼に焼き付けん……」
「ゼロ姉様!?だめよ!刀剣男士の為にも、みんなで生き延びる道を探しましょう!」
「寝ぼけたことぬかすな、コラ!」
空が眩く光る。
あれがくる、断罪の槍が。
いかなるものも貫く断罪の槍を相手に、古の盾はもつのだろうか。
フォウはゴクリと喉を鳴らすと、自分が震えてることに気付いた。