第12章 山の国 Ⅳ
ゼロを援護するように兵士達と戦っていた山姥切だったが、ふと違和感に気付く。
「ゼロっ!」
「なんだ?」
「審神者の気配なんだが、ゼロ以外に感じない。この要塞にフォウは本当にいるのか?」
「はぁぁっ?」
思いもよらなかった言葉に、ゼロが顔をしかめる。
すると、ゼロ達に向けて大砲が撃ち込まれた。
「殺せっ!ゼロを殺せっ!」
「次から次へと……」
「伝令!フォウ様の退却を確認しました」
「よし、ここで食い止めるぞっ!」
一際大きい大砲が要塞の壁面から現れると、大口径砲がゼロ達に向けられ、容赦なく撃ち込まれる。
「裏切り者の審神者に死を!」
大口径砲の他、兵士の合図でギガースが数体、ゼロ達がいる広場へと現れる。
「ゼロ、これは……」
「どうやら私達は、フォウにハメられたらしいな」
ゼロは大口径砲に向かって跳躍すると、砲台を守る兵士達を薙ぎ倒す。
山姥切達は、ゼロを援護するようにギガースに斬りかかっていった。
だが、倒しても倒しても、ギガースが絶え間無く広場へと現れる。
「これだけ戦ってフォウがいないって、あり得ないだろ?騙しやがって!」
「ゼロ、フォウがいないならこれ以上戦うのは……」
これ以上は、体力を消耗するだけだ。
山姥切は撤退を促そうとするが、ゼロはそれを聞き入れるつもりはないらしい。
「うるさいっ!ここまで面倒臭い目に遭わされて、腹が立たない方がおかしいだろ」
「おお怖い、ゼロは怖いなあ」
「まとめて片付けてやる……」
ゼロは血ふりをすると、愛刀を鞘に収めた。
「あーあ、ゼロが本気で怒っちゃった。知ーらないっと」
一呼吸おくと、右手を空にかざす。
すると、上空に光が満ちていった。
「第五の力、古の威光。神罰が彩る断罪の槍……」
上空に満ちた光は、やがて無数の黄金の槍へと変わる。
その光景は、先の戦闘でファイブが使った審神者の力と同じもの。
ファイブを殺して得た力、断罪の槍。
太古の昔、神罰と恐れられていた雷を模した、光の槍だ。
審神者はこれを操ることで、無数の敵を一掃することができる。