第12章 山の国 Ⅳ
「我がゼロの名において。貫けっ!心の臓をっ!」
ゼロはかざした右手をグッと握りしめると、勢いよく振り下ろした。
右手が振り下ろされると同時に、黄金の槍は雨粒のように兵士へと降り注ぐ。
「がっ……ぐ」
「あれが、審神者の……」
黄金の槍は容赦なく兵士たちやギガースの体を貫き、呻き声と血の匂いが満ちる。
やがて、槍に貫かれた者達は息絶え、辺りには静寂が訪れた。
「結局皆殺しか……容赦無いね、ゼロは」
死体の山を見て、歌仙は肩をすくめた。
歌仙は仕方ないと思っているのかもしれない。
だが、山姥切は納得のいかない様子だった。
「ゼロ、どうしてそんなに妹達を殺したいんだ?家族、なんだろう?家族って、大切なんじゃないのか?」
「大切じゃない、妹なんて……」
顔色一つ変えずに、ゼロは吐き捨てるように言う。
だが、歌仙はゼロが愛刀を強く握り締めたことに気付く。
彼女自身は気付いていないだろうが、ゼロは何かを言い濁す時、刀を握りしめる癖がある。
一体何を、彼女はその心に秘めているのだろうか。
「ゼロ……」
「作戦を練り直すぞ」
ゼロは山姥切達に背を向ける。
誰も、それ以上ゼロに何かを言うことはなかった。
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