第11章 山の国 Ⅲ※※
「煩い、お前の意見は全て却下だ」
山姥切が何を言っても、ゼロは険しい表情のまま、山姥切を放そうとはしない。
それどころか、ゼロの眉間の皺が濃くなるばかり。
「ゼロ、なぜ……」
「なぜ?愚問だな」
ゼロは冷たく言い放つ。
だが、何故かは答えない。
「ゼロ、ここがどこか、ようやくわかったよ。もうすぐ進めば、屋敷がある……たぶん」
「たぶん?」
「ああ、審神者が国を治める前の領主が使っていた別荘があるんだ。一度だけ、訪れたことがある」
審神者の前ということは、かつてこの世界の民を暴力で抑えつけ、圧政を強いていた統治者である。
理不尽に人が死に、世界が歪んでいくのを止めるため、審神者と刀剣男士が彼らを討ち取った。
それがフォウやファイブ、ワン達もそうである。
そして、ゼロは……。
「そうか、急ぐぞ」
ゼロは弱々しくもがく山姥切を落とさないように、しっかり抱いたまま、屋敷を目指して進む。
山姥切は目を閉じ、このまま消えてしまいたい。そう願っていた。