第10章 山の国 II※※
「山姥切、君は何故ゼロと一緒にいるんだい?」
「え、何故……って」
山姥切は歌仙の質問に、言葉が詰まる。
何故、ゼロと一緒にいるのか。
改めて聞かれると、山姥切もまた何故かよく分からなかった。
「わからない。最初は、ゼロに傷を治してもらった借りを返すつもりで……」
「借りを?それなら十分過ぎるほど返しているんじゃないかな?」
歌仙はいつ本題に切り出すか、様子をうかがいながら質問を重ねる。
おそらく、山姥切はこういうことには鈍い。
遠回しに言うべきではないかもしれない。
「もしかして山姥切はゼロのことを好き……なんじゃないかな?」
「はぁぁぁぁぁっ!?好き!?俺がっ?ゼロ……を?」
山姥切は顔を真っ赤にした。
「違うのかい?」
無自覚かもしれないが、山姥切はゼロに想いを寄せているだろう。
この様子なら、おそらく照れ隠しで気持ちを否定して話は終わるだろう。
歌仙はそう思ったが、山姥切は何も答える事なく、黙り込んでしまった。
二振りの間に沈黙が訪れる。
「……俺は正直言って、知識に富んでいるとは言えない。ゼロや歌仙の会話にすらついていけない事もある」
沈黙を破ったのは、山姥切だった。
彼は考えながらゆっくりと話しだす。
「好きが何なのか、わからない。歌仙はわかるのか?」
「うーん、好きが何なのか、かぁ。改めて聞かれると答えに困るね」
「すまない」
山姥切が申し訳なさそうに言う。