第10章 山の国 II※※
「二手に分かれるのは、戦力が分断されるから得策とは言えない。それに、僕は君の刀剣男士だ。離れて行動するのは……納得出来ない」
歌仙の様子は必死だ。
普段あんなに憎まれ口を叩いていると言うのに。
山姥切はゼロがどういう判断をするのか気になり、彼女の顔を見る。
「歌仙……」
ゼロは山姥切同様、驚いた表情をしていた。
歌仙がゼロに反論したからか、ゼロと離れたくないと言ったからか、どうなのかはわからない。
ゼロはふっとため息をつくと、何か思案するような表情をした。
「わかった、二手に分かれるのはやめよう。
ゼロの言葉に、歌仙は安堵の表情を浮かべた。
「歌仙、私と一緒にいたいんだな?」
「…………そうだよ」
「そうか……なら、全員で洞窟から行こう」
ゼロは歌仙に背を向けると、洞窟へと向かう。
「歌仙、すまなかったな」
背を向けたまま、ゼロが呟く。
何故、ここでゼロが謝罪の言葉を述べたのか。
歌仙や山姥切は、わからなかった。
ゼロはそれきり、何も言わない。
先頭を切って洞窟を進むゼロの背中を、歌仙達もまた何も言わずについて行った。