第10章 山の国 II※※
「さっさと進んでフォウを倒すぞ」
「ゼロ、体は大丈夫なのか?」
「問題ない」
傷は治ったが、切りつけられた胸元は彼女の血で真っ赤だ。
山姥切はゼロの体を心配するが、ゼロは何事もなかったかのように振る舞う。
「言っただろう?審神者を殺せば、相手の力が私のものになる。今の私なら、ファイブが使った技を使うことができるんだ」
「けど、少しは休憩するべきじゃないか?」
「しつこいぞ!私の心配をする暇があるなら、さっさと進め」
歌仙もゼロを気遣うが、ゼロは歌仙達を一喝する。
「あの先にフォウの要塞があるんだ。すぐそこに見えているのに、休憩なんてしてられるか」
もう少しの距離に、要塞につながるであろう門がそこにはあった。
ゼロは歌仙達に先を急ぐよう促す。
だが、歌仙はふと違和感を感じてゼロの腕を掴んだ。
「ゼロ……ここからじゃ、要塞に入れない」
「はぁ?」
山姥切が数歩歩き、手を伸ばすと、何もないはずなのに硬い何かに手が触れる。
そこには見えない壁があった。
「これは、審神者の力だ。審神者の力で見えない壁を作っているみたいだ」
「ふん、こざかしい事をする妹サマな事で」
「仕方ない。歌仙、私達はこの下の洞窟から行く。お前は上から回り道を探せ……」
「だめだっ!!」
「え?」
珍しく、歌仙が声を荒げた。
これまでゼロに対して生意気な態度をとることはあったが、真っ向からゼロの意見を反対する事はなかった。
歌仙は拳を震わせながら、ゼロの顔を見据えていた。