第8章 借りを返しに
「お待たせ、ファイブ」
「あの野良猫、ゼロお姉様の新しい近侍になさるおつもり?」
ファイブは横目で山姥切を見と、唇を舌舐めずりした。
「あの美しい顔……とっても美味しそう。ゼロお姉様、よかったら今度三人で……」
「君に今度はねえよっ!」
美味しそうとか言うな。穢らわしい。
苛々しながら、ゼロはファイブの攻撃をかわすと、傷を負ったファイブの脇腹を思い切り蹴りだした。
「アイツを野良猫と呼んでいいのは……私だけだ」
「ぐ……っ」
ファイブは足がもつれたようによろけ、呻き声とともに仰向けに倒れる。
「そ、んな……審神者の力が……」
倒れたファイブにゼロは近付き、彼女の傍らに転がった槍を遠くへと蹴ると、ファイブの腕を踏み躙る。
「あ、いやっ!助けて……」
ファイブの懇願など聞こえないかのように、ゼロはファイブの肩に刀を突き刺した。
「あぁっ……痛っ、ガッ……グッ」
ファイブから呻き声と共に血が吹き出るが、ゼロは間髪入れずに今度は胸を何度も突き刺す。
心臓を抉るかのように何度も、何度も。
「ゼロっ!そんなに……っ」
「黙ってろ!」
山姥切は目を瞠ってゼロを諌めたが、彼女の手は止まらない。
ゼロはファイブの首筋に刀を押し当てると、山姥切の方へ振り向いた。
「審神者は、ここまでやらないと死なない……」
「あっ!ゼロ!!」
ゼロがファイブから目を離した瞬間、ファイブはその隙を見てゼロの刃から逃れた。
「ぐ……あ、うぁぁぁぁぁああああ!!」
渾身の力を込めて立ち上がり、ファイブが叫び声を上げると、その体から金色の光が放たれる。
波打つように辺りに光が満ち、あまりの眩しさにゼロ達は思わず目をそらした。