第8章 借りを返しに
「ゼロお姉様……お強い」
ファイブが斬りつけられた脇腹に手を触れると、その指先に血がつく。
彼女は血がついた指をひと舐めすると、愉悦交じりに笑った。
「ははっ、君をぶちのめしたくて、ウズウズしていたんだ」
「私はゼロお姉様に会いたくて、会いたくて……ただ会いたくてジュンジュンしておりましたわっ」
「そりゃ、よかった」
傷を負ったファイブは、もう先程までのように速い突きを繰り出せないだろう。
ゼロはここぞとばかりに斬りかかった。
「ゼロお姉様、お美しい。戦っているときのゼロお姉様は、もっとお美しい」
「君に言われても嬉しくないね」
ゼロは跳躍して上から斬りつけると、ファイブはこれを槍の柄で受け止め、刀を弾き返す。
「ふふっ、わたくしがゼロお姉様に誇れるのはこの胸、成長の良すぎるわたくしのこの胸、触ってもよろしくてよ?」
「手が腐る」
ゼロがイラつくとわかっているのか、それとも無意識で言っているのか。
今すぐ、死ね。胸から腐って死ね。
ゼロは不快感を前面に出しながら、心の中で毒を吐くと、横目で山姥切の様子をうかがった。
「…………」
何か思うところがあったのか、ゼロは大きく後ろに跳び、ファイブの間合いからでる。
すかさず、歌仙と刀を交えていた山姥切に近寄ると、彼と背中合わせになった。