第8章 借りを返しに
山姥切が共に戦うおかげで、容易く進めるようになったが、それでも海上神殿はまだ先だ。
ゼロも流石にウンザリしてきていた。
「ファイブ様の元へは行かせん!!」
「ファイブ、ファイブって煩いな。さっさと死んでくれ」
ゼロ達が神殿に近づけば近づくほど、兵士の数は増えていく。
「まったくウジャウジャ出やがって……ゴミのようだな!!」
叫んだゼロの姿は返り血で赤く染まっていた。
ゼロは山姥切を見ると、顎をクイっと目の前の兵士達を指し、目配せをする。
「薙ぎ払え」
「……俺が、か?」
「出来ないのか?なら私が手本を見せようか」
顎で使われている。
そんな気がするのは、あながち間違ってはいない。
山姥切は借りを返すと言ったことを、今更ながらに後悔した。
それでも山姥切は律儀にゼロの言うことを聞く。
風のように山姥切は兵士達に向かって跳ぶ。
山姥切が地面に降り立ったとき、何人もの兵士達が斬り倒されていた。
「出来るじゃないか」
ゼロは、にっと笑った。
それをみた山姥切は、一瞬思考が止まる。
一拍したのち、頰が赤く染まるのを感じ、ゼロも笑うのか、と心の中で呟いた。
「なあ、ファイブってどんなヤツなんだ?姉妹なら、お前に似ているのか?」
山姥切の問いに、ゼロは再びいつもの無表情となる。
「ファイブは、無駄にでかい乳をぶら下げた、色ボケクソ女だ」
ゼロが皮肉めいて言い方をすると、山姥切は黙った。
だが加州は面白がって冗談を言う。
「へぇー、おっぱい大きいの?じゃあゼロと全然似てないね」」
ゼロに、冗談は通じない。
加州の言葉に、ゼロの目に殺気が走った。
ギリっと渾身の力を込めて柄を握り締める。
「……折るぞ?折られたいのか?」
「えーっと、ゼロー!見てみて!!海、綺麗っ!!」
「誤魔化すな!余計なこと言わずに、斬ってなさい」
「はーい」
ゼロは苛立ちながら、山姥切に背を向けて走り出す。
彼女の背を見つめる山姥切は、ゼロの殺気立った様子に、ただ首を傾げていた。