第8章 借りを返しに
神殿までの門を次々と突破するが、肝心の神殿の場所がわからない。
闇雲に走り回っていると、ゼロ達は海軍の屯所のようなところにでた。
「ゼロだっ!」
「あいつを殺せば、ファイブ様にお目通りが叶うぞっ!!」
「よし、殺せ殺せ殺せぇぇぇ!」
「……ウジ虫のように湧いて出てくるな」
ゼロは構えるわけでもなく、愛刀を握り締めたまま飄然と立っていた。
ゼロは周りをうかがう。
彼女が動こうとしないのをいいことに、兵士たちはゼロを取り囲んでいた。
「大丈夫、ゼロ?」
「ヤル気ないと見せかけて……あれ?フェイントに見せかけて攻撃?」
「それ、俺の台詞ぅ」
幾人もの兵士のどこから斬り殺していくか、ゼロは気怠げに考える。
「俺が相手だっ!!」
誰から殺すか、考える手間が省けた。
ゼロは冷たく笑うと、正眼の構えになった。
ゼロも加州と同じ、天然理心流。
加州ほどではないと自負しているが、彼女の三段突きをかわせるものはいない。
ゼロは立候補してきた兵士を冷やかな視線を送ると、柄を握る。
突く、そう思った瞬間、何者かが疾風のように飛び込んできた。
「っ!?お前っ!!」
山姥切国広だった。
間に割って入るなり、山姥切は居合いを放つ。
その一刀のあまりの速さに、彼の前にいた兵士は何が起きたかわからないまま、崩れ落ちていった。
手練れがさらにもう一人増えた。
その事実に兵士達は慄き、一目散に逃げ出して行く。
逃げていく兵士達を横目に、ゼロは山姥切に近付く。
「お前……なぜここに来たんだ」
「俺はお前達に干渉しない。だが、借りはかえす。それだけだ。それで、その……お前、昨夜のことだが……」
「……え?何だって?」
ぼそぼそ喋って聞き取りずらい。
ゼロは山姥切の腕を掴み、話しを聞こうとする。
だが、山姥切は顔を赤らめながらゼロを距離をとる。
「だからっ、お前……俺の傷を治しただろう!つまり……」
「あぁ!安心しろ、まだお前の童……」
「言うなっ!!」
童貞のまま。
そう言おうとしたが、顔を真っ赤にした山姥切が大声を上げる。
すると、二人のやり取りを聞いていた加州がすかさず会話に割り込んだ。