第6章 雨の中で I
昔、審神者が刀剣男士を伴って、この地に降り立った。
刀剣男士は、審神者によって人の形を与えられ、審神者に付き従う。
彼らは主である審神者と共に戦い、歴史を守るのだという。
なら、主を持たない刀剣男士は何のために戦えというのだろうか。
はぐれ刀剣男士。
かつて、主を失い、人の形を失った刀。
その刀が再び人の形を得た存在だ。
はぐれ者と揶揄される刀剣男士に、戦う意味は、生きる意味はあるのだろうか。
この世界には、はぐれ刀剣男士が一振りいる。
山姥切国広だ。
彼には、主だった審神者との記憶も、その頃の記憶すらない。
全てがどうでもよくて、さして興味も無い。
ただ、審神者とは何者なのか。
刀剣男士達を束ね、彼らと戦い、守られる存在。
その存在には興味があったのだ。
彼はこの世界に降り立った審神者を一目見るために教会都市に来ていた。
一目だけでいい。
それだけのつもりだったのに。