第5章 裏切りの審神者 ここから本編
「チッ!」
ゼロは足元を見やる。
勢いつけて飛び退きたいが、その衝撃にたえられるか。
ゼロは舌打ちした。
「いいねぇ……驚かせてもらったぜ。だが、まだまだだな」
不意を突かれてゼロの刀に押し返されたものの、鶴丸の刀は太刀だ。
いくらゼロの剣戟がすぐれているとはいえ、ところどころに傷を負った彼女が鶴丸に勝てるわけがない。
鶴丸は間合いを少しとると、再びゼロに刃を向ける。
そして、一気に間合いを詰めた。
「くそっ!」
足元に力を入れた瞬間、ガラッと何かが崩れる音がした。
その音に気を取られたせいか、ゼロの反応が遅れる。
おそらく、ゼロは鶴丸の刃を避けられない。
彼女は歯を食いしばった。
「ゼロっ!!」
鶴丸の刃がゼロの体を斬りつけるようとする寸前、加州がゼロと鶴丸の間に割って入り、鶴丸の刀を受け止めた。
「まだ、生きていたか。加州清光」
「鶴丸か、一騎打ちしちゃう?……なんてね。もう、終わりだよ」
加州はゼロを抱き上げると、足元に刃を突き立てる。
途端、亀裂が大きく広がり、足元が崩れ落ちていった。
ガラガラと大きな音を立て、鶴丸の視界からゼロと加州が消え失せた。
「やれやれ……」
鶴丸は足元に空いた大きな穴を見下ろす。
ここから落ちて助かるだろうか。
そんなことを考えていると、ワンが鶴丸の背後に立っていた。
「逃げたか……」
どうやらワンはゼロがここから落ち死ぬとは思っていないようだ。
確かに、そうだ。
加州清光がいるのなら、彼が全力で彼女を守るだろう。
彼はそういう男だ。
「審神者を全部殺すだって……?馬鹿なゼロ。ふふふっ……ははははっ!!さあ、殺し合おう……全てが終わるまで」
ワンが自嘲気味に笑う様子を鶴丸は黙って見つめる。
ゼロ、次に彼女がここに戻って来た時には、どんな驚きが待ち受けているのか。
そう思いながら鶴丸は刀を鞘に納めると、その場を後にした。
彼女にとって、全てを賭けた戦いが始まる。
全員殺すまで、彼女の戦いは終わらない。
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