第5章 裏切りの審神者 ここから本編
最初は互角だった戦いでも、長く続けばどちらかが疲弊していく。
トゥをはじめ、スリィやフォウ、ファイブも息を乱し、今にもゼロの刃で斬り殺されてしまいそうだった。
最強の審神者と言われたゼロを相手に、四人掛かりでも敵わないのだ。
「見事、と褒めておこう。だがゼロ、お前に討たれるわけにはいかないんだよ」
姉妹達が戦う様を俯瞰していたワンは、右手をゆっくりと掲げる。
その手に握っているのは、審神者だけが持つことを許される神楽鈴。
「……来い」
掲げた神楽鈴をワンは優雅な仕草で鳴らした。
凛とした音が鳴り、辺りの空気が変わる。
「……っ!?」
ゼロは何かの気配を感じ取り、思わず後ろに飛び退く。
すると、彼女の前に真白な衣装に身を包んだ青年がふわりと降り立つ。
その様子はまるで、鶴のように美しく優雅なものだった。
「鶴丸……か」
「よっ!俺が来て驚いたか?ま、あんたならある程度予想してただろ?こう……なるって」
ゼロは鶴丸の問いに黙ってうなづく。
鶴丸国永。
加州清光に及ばないが、彼もまた強い。
ゼロも負けじ劣らずの力を持ってはいるが、果たして体力が持つのか。
「鶴丸、お前に私が殺せるのか?」
「主の命令なんでね……手加減はしないぜ?」
鶴丸は柄を握ると、一気に抜き放った。
ゼロに刃を向ける鶴丸に、彼女の表情はピクリとも動かない。
「面白い。比べてやるよ、加州清光とっ!!」
そう言い放ち、ゼロが鋭い勢いで斬りつける。
鶴丸はしなやかな動きでこれをかわすと、踏み込んだゼロの足を蹴りあげた。
「遅い遅い!」
呻き声とともにゼロは転倒するが、鶴丸の一振りが来る前にすぐに態勢を立て直す。
起き上がりざま、ゼロが掬い上げるように斬りつけると、鶴丸の右腕を切っ先が掠る。
「おっと、そっちか」
鶴丸は後ろに飛び退き、ゼロの間合いの外へと出る。
だが、それはゼロには無意味。
ゼロは一気に前に踏み込むと、驚くほどの速さで間合いを詰めた。
「っ!?」
避けきれない。
そう思った鶴丸は刀を一閃させた。