第16章 飛空艇 Ⅱ※※
ゼロは眉根を寄せて山姥切を見ると、彼の上半身にある傷が目に入った。
「怪我、してるじゃないか!」
浅いものだが、脇腹に大きく一箇所、あとは細かい傷がいくつか見受けられた。
おそらく、一期一振との戦いで負傷したのだろう。
この傷でよく朝の稽古に取り組めたものだ。
ゼロが傷をよく見ようと山姥切に一歩近づく。
だが、その分山姥切は一歩後ずさった。
「…………おい」
ゼロがまた一歩進み、そして山姥切が後ずさる。
その状況に、ゼロは舌打ちをすると、勢いよく踏み出して間合いを詰めた。
そして、山姥切の布を掴んで勢いよく引っ張る。
「な、なにをするっ!?」
「騒ぐな、破くぞ!負傷したんだろ?見せろ!」
ゼロの目、本気だ。
これを破かれたら、替えがない。
山姥切は観念して後ずさるのをやめた。
「大したことないみたいだね。こんな程度なら、ちょっと触れただけで終わる」
「そう……なのか」
「ああ、触れるだけで直せるようになった」
そうか。ならもう、ゼロと共寝する必要はないのか。
そういうことになる。
山姥切はほっとしたような、そうじゃないような、どちらとも言えない気持ちになった。
「今、残念そうな顔をしたね。もしかして……してほしかった?」
「違っ!そんなことはないっ!」
「はいはい、わかったから……そろそろ大人しくしなさい」
ゼロは山姥切の体をベッドに倒すと、布の結び目を外す。
布を取られることに抵抗しようと体を起こそうとしたが、ゼロの手が額に触れ、強めの口調で目を閉じるよう促された。
「ん……っ」
ゼロの手が、肩に触れる。
彼女の手が冷んやりとしていたせいで、思わず体がピクンと震えた。