第15章 雨の中で II
加州清光は今、消えようとしている。
審神者のために。
己の身を犠牲にして、彼女を生かそうとしている。
彼女の望みを叶えるために。
「なんで、なんで審神者の為にそこまでする!?お前の意思はっ!望みはどこにあるんだ!」
「俺の望みは、彼女と一緒にいること、彼女の望みを叶えること。けど……俺だけ生きていても、彼女の望みを叶えることは出来ない」
張り詰めた空気の中から、キンと耳鳴りのような音が響く。
煌めいていた光は、加州の手元だけではなく、だんだんと大きくなり彼の刀を包み込む。
「体を還したら、お前はどうなるんだ?」
「わからない。全てを忘れて刀に心が還るのか、それとも消えるのか。けど……たとえ俺が彼女のことを忘れても。俺が、消えても……俺の心はゼロの中にある」
加州に初めて出会ったとき、彼は言った。
彼女を愛しているから。
彼女のために戦うことを、自分で決めたのだと。
山姥切は知らない。
愛なんて、知らない。
誰かの温もりも、優しさも。
「俺には、彼女はたった一人の……大切な女の子なんだ。好きな子のお願いは叶えてあげたくなるでしょ?」
そう言って、加州は屈託もない笑顔で笑う。
山姥切には、彼の気持ちが理解できなかった。