第15章 雨の中で II
「ゼロはまだ、生きなくちゃならない。だから、俺だけが生きていても……意味がないんだっ」
そう言うと、加州は腰に下げていた刀を手に取る。
朱塗りの鞘に納まっていた刀を鞘から少し抜くと、きらりと刀身が光る。
「おい!何をする気だっ!」
「大したことじゃないよ。ゼロに貰ったこの身体を、彼女に還すだけ」
加州は刀を手にしたまま振り返ると、ゼロの眠る部屋へと足早に向かう。
まさか、自害する気か。それとも審神者を。
山姥切は加州がなにをするのかわからず、慌てて加州の後を追う。
「おい、加州!一体何を……っ」
「心配ないよ。山姥切が思ってるようなことにはならないから」
また、わかったような口を利く。
加州は刀を抜き、眠るゼロの傍に立っていた。
「俺が持つ力がゼロに還れば、彼女は……ゼロはきっと目を覚ますはず」
加州は鞘から抜いた刀を高く掲げると、小さくなにかを呟いた。
そして、再び鞘に刀を納める。
カシャンと音が部屋に響くと、室内の空気がピンと張り詰めたように感じた。
一体、何が起ころうとしているのか。
山姥切が加州とゼロを交互に見やると、それは起きた。
加州の手元が淡く、赤い光が炎のように煌めき始めたのだ。