第15章 雨の中で II
「あ、ちょっと興味持ってくれた?彼女は教会都市での戦いから逃げる時、頭に深刻なダメージを負ったんだ。審神者には自己治癒力があるけど……」
くそ、なんだか乗せられた気分だ。
山姥切は内心舌打ちしたが、もう興味のない素ぶりをするのはやめた。
確かに、彼女の容態がずっと気になっていたのだから。
「けど、なんだ?」
「彼女は、今、弱ってるんだ。いや、弱ってるというか、力が使えないというか……」
最初、山姥切がゼロを見た時、彼女からは溢れるほどの強い力を感じた。
それなのに力が弱まっているというのは、どういうことなのだろう。
「ゼロはすごく強い。尋常じゃないほどね。それは、彼女が大切な役割を持っているから。けど……」
加州は顔を歪ませると、唇を噛み締めた。
「この世界には今、六人の審神者がいる。それは普通では、あり得ない。それに……彼女は、この世界でどうしてもやるべきことが残っている。それを果たさないと……終わらないんだ」
「……何が、終わらないんだ?」
今、この世界はゼロを除く五人の審神者が各国を統治していることによって、平和が保たれている。
だから彼らが言う、やるべきこととはどのようなものなのか、見当がつかない。
「悪いけど、全部は言えない。信用してないわけじゃないよ」
言えない。
それは、山姥切がはぐれ者だからか。
全てを話さない加州に少し苛立ったが、同時に彼らの事情を知りたいと思った自分にも苛立った。
干渉しない、そう思っていたのに。
気付けば干渉ばかりしている。