第15章 雨の中で II
山姥切は窓の外から視線を外すと、加州に向き直る。
じっと彼の顔を見れば、加州は何かに気づいたのか、腕組をやめて山姥切の目を見つめ返す。
「なに?」
「……なかなか目を覚まさないな、お前の主は」
「そーね……」
今度は加州が視線を外して窓の外を見た。
触れてはならない話題だったのだろう。
山姥切は心の中で己の無神経さを罵った。
「それで?本当は、俺に聞きたいことがあるんじゃないの?」
その言葉に、山姥切は眉根を寄せた。
別に、聞きたいことなどない。
ない、はずだ。
……いや、本当は聞きたいことも知りたいこともある。
けれど、干渉はしたくない。
「別にいいよ。山姥切国広が素直じゃないって、痛いほどわかってるから。じゃあ、俺が山姥切が知りたがってること話すね」
「別に、そんなんじゃ……っ!……勝手にしろ」
山姥切は布を目深に被り、目を伏せた。
くそ。気に入らないな。
彼は時折、山姥切のことを知っているかのような素振りをする。
事実、加州は山姥切が名乗る前に、彼が刀剣男士だということも、山姥切国広だということも知っていた。
対して山姥切は、加州清光も、審神者のことも詳しくは知らない。
それが腹立たしかった。
「彼女は審神者だ。それはもう、わかってるよね?」
「ああ。こんな俺でも、一目でわかった」
教会都市の廃屋で彼女を一目見たとき、それはすぐにわかった。
体から溢れる彼女の力に身震いしたくらいだ。
今なら、無意識に審神者の力に引き寄せられてあの場に行ったのではとすら思える。
「正直言って、彼女は……目覚めない。もしかしたら、永遠に」
「なっ!?何故だ……」
彼女が目覚めないと聞いた山姥切は思わず目を見開き、前のめりになって聞き返すと、その様子に加州はクスリと笑った。