第14章 飛空艇 Ⅰ※※
「下僕、ということは、あなたがゼロ様の近侍なのですか?」
「いや、俺は近侍じゃ……」
山姥切が手を差し出そうとした瞬間、一期一振の問いに思わず体を強張らせた。
歌仙も、一期一振も、ゼロの刀剣男士。
けれど、山姥切は違う。
「俺は……アイツの刀剣男士じゃない」
その言葉を口にした瞬間、山姥切の胸がズキンと痛む。
けれど、それを表情に出したくはない。
山姥切は表情を変えずに、手を伸ばして一期一振と握手を交わす。
「俺に主はいない。必要ない」
また、胸が痛む。
さっきよりも強く、鋭く痛んだ。
同時に、ゼロがどのような表情をしているのか気になってしまった。
けれど、それを確認する気にはなれなかった。
山姥切が俯くようにして一期一振から目を逸らすと、彼はそれを気にすることもなく言葉を続けた。
「それでは、ゼロ様の近侍はどなたなのですか?」
「え?あぁ……そういえば話していなかったね」
ゼロはそう言うと刀を抜き平晴眼の構えをとった。
殺気は感じないが、彼女の突然の行動に、一期一振と歌仙は息を呑む。
「天念理心流、新撰組沖田総司の愛刀、加州清光……」
ゼロの言葉に、一期一振はハッとした。
この構えには、見覚えがあった。
ゼロの刀が素早く空を突く。
その剣技は、無明剣。
新撰組沖田総司が得意とした三段突きだ。
三度の突きが、速さ故に一度の突きにしか見えないと言われている。
ゼロのそれも、逸話に劣らないほどの速さだ。
けれど何故、今この剣技を披露する必要があるのか。