第5章 裏切りの審神者 ここから本編
「ゼロ姉様!!もうこんな不毛な戦いやめて!私たち姉妹でしょ!?」
「何を言っているのフォウお姉様?今からゼロお姉様と狂おしいほど絡み合うっていうのに!!」
ゼロと戦いたくないと叫んだのは、四番目の妹のフォウだ。
彼女は姉妹の中で、ゼロを最も慕っていた。
それに対して、ゼロと戦いたくてしょうがない様子なのは、五番目の妹のファイブ。
妹達全員、姉であるゼロの顔とよく似ているが、性格はそれぞれ違う。
敢えて共通点を述べるとしたら、全員が審神者だという点だけ。
「大人気だ……長女はつらいねぇ」
無表情のまま、ゼロはワンの顔を見る。
つらいなど、微塵も思っていないくせに。
ワンはゼロに怒りを覚えるが、表立って感情を出すことはしない。
「早速だけど……お別れだゼロ」
「そう、お別れだ」
ワンの言葉と共に、妹達がそれぞれの武器を手にゼロのまえに降り立つ。
ゼロは刀の鯉口に指をかけた。
「さて、死にたい奴から順番に、かかって来いっ」
ゼロはワンを除く、四人の姉妹達に取り囲まれる。
それでも、ゼロは刀を抜こうとはせず、じりじりと横に動きながら周りをうかがった。
「ねぇねぇ、ゼロ姉!私ね、こーんな大きな刀も使えるようになったんだよー!!すごくない??」
最初に攻撃を仕掛けてきたのは、スリィ。
彼女は身の丈よりも遥かに大きな太刀を手に、悠然とゼロに斬りかかる。
その太刀筋は、大太刀を振るっているとは思えないほど実に軽やか。
だが、紛れもなく大太刀のその一振は、暴風の如く。
「今ならゼロ姉に楽に勝てちゃうかもー」
「私に勝てるだって?馬鹿な考えは大概にしろって」
「そーお?だって私、日に日に強くなってるんだよー?」
ゼロはトゥの攻撃を、一寸の見切りでことごとくかわす。
その動きは、まるで舞でも踊っているかのように優雅で美しい。
だが、口から出る言葉は優雅さのかけらもない。